私達(小林と大木)は10年程前から遺伝子組み換えの映画『暴走する生命』、『パーシー・シュマイザー モンサントとたたかう』などの日本語版を作り上映・配給してきた。3年前、ある農家の「苗は自ら育つ」という言葉に出会った。それは上映してきた映画とも響き合うものだった。映画を撮ろう。私達の住む埼玉県飯能市で、無肥料自然栽培に取り組む若い就農家たちや固定種野菜の種子を専門に扱う種屋さんを取材しながら、自分たちも稲や大豆を育て、カメラを回してきた。
一方この間に、ゲノム編集が脚光をあび、一気に商品化が現実のものとなった。狙った遺伝子を効率よく改変できると言うが、その安全性については十分な議論がされていない。ゲノム編集は自然界の突然変異と同じだ、と推進者たちは言うが・・・ ゲノム編集とは何か、何が問題か、分子生物学者の河田昌東さんに取材した。河田さんは「一個の遺伝子を変えれば、目的以外の遺伝子にも影響を与える。そこを考慮しないのはたいへん危険だ」と言う。そして、政府もマスコミも取り上げないゲノム編集の本質的構造的な問題を警告する。
消費者にとってゲノム編集とは? 1996年海外から遺伝子組み換え作物が導入された時、その表示を求めて広範な市民運動を巻き起こした人たちがいる。表示は一定の成果をあげ、人々の関心を高め、以来日本では遺伝子組み換え作物の商業栽培はされてこなかった。消費者の立場から活動してきた人たちの声を聞く。
*2020年12月11日、ゲノム編集トマトが届出されました。その苗を一般消費者に配布し家庭菜園で育てるという企業の宣伝がインターネットで行われています。ゲノム編集大豆の輸入も近いと言われます。生き物の世界と科学技術を問う私達の映画制作はこの先も長く続くが、まずは第1弾を発表します。映画を映すことで、何が問題なのかを語り合う場を作りたいと思います。
2021年5月 KO-OK小林大木企画